離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 私が最後に高城の父に会ってから、十年以上が経っていた。

 どうしてふたりがここへ? なぜこの場所を知っているの?

「まつりちゃん。久しぶり。ずいぶん立派になったね」

 混乱する私に、高城の父がわずかに震える声で言った。その瞬間、私は頭の芯が弾けたような気がした。

「ここへなにしに来たんですか」

 私はその場に立ち上がり、ふたりのもとへ歩き出す。

「よくも今日、父のところへ。帰ってください」

 ふたりの眼前まで迫り、静かながら精いっぱいの憤りを言葉に乗せた。それでも動かないふたりに、私は「帰って!」と悲鳴にも似た声を上げる。

 すべてが台無しなのはわかっていた。それでもこのふたりが父のもとへ足を踏み入れるのだけはどうしても許せなくて、感情が制御できなかった。
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