離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
祝福の日に、愛を込めて
 悠人さんと想いが通じ合ってから三日後。仕事の帰りにカフェの近くの公園を訪れた私は、小さな噴水のそばに見知ったシルエットがあるのを見つけて駆け寄った。

 十一月中旬を過ぎ、走る私の口から微かに白い息が立ちのぼる。

「郁実」

 私の声に気づいた郁実が、「おう」と片手を上げた。

「ごめんね。忙しいのに急に呼び出して」

「気にすんな」

 なんでもないように言うけれど、郁実の鼻はわずかに赤くなっている。

 もしかすると、かなり早く着いていたのかもしれない。今日は日中も冷えたし、夜はコートを着ていても肌寒いから。

 いつもならそれをたわいもなく話していただろう。しかし、今日は先に郁実に伝えなければいけない思いがあった。
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