離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 * * *

 過去を思い返し、ときどき思う。

 悠人さんが会いに来てくれなければ、私は今頃どうなっていたかな。きっと、悠人さんを恨み続けて、今も憎しみに心を燃やしていただろう。

 こんなふうに幸せになれなかったし、なろうともしていなかったはずだ。

 白を基調とした明るい部屋には、ヨーロピアン調のドレッサーやテーブル、ソファーなどの家具があり、壁には大きな鏡が設置されている。

 あちらこちらに淡いピンクの花が飾られていて、そのどれもが今日の日をお祝いしてくれるように咲き誇っていた。

 先ほど着替えとヘアメイクを終えた私は、部屋でひとりになり、窓際にあるふたり掛けのソファーに座っていた。

 今袖を通している純白のプリンセスラインのドレスは、存在感のあるティアードスカートがふんわりとしていて、座っていてもいささか浮いているように感じる。
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