離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 オフショルダーで開いた背中が首もとまでレースになっている可愛らしいデザインのこのウエディングドレスは、何着も試着した中から悠人さんが選んでくれたものだった。

 髪はアップスタイルで、編み込んだサイドにはいくつも真珠が散りばめられている。

 悠人さんと入籍してから、約九か月が経った。外は初夏の緑の匂いで溢れている六月二十日。私たちは今日、結婚式を挙げる。

 想いが通じ合って迎えた最初のクリスマス、悠人さんが結婚式をしようと提案してくれた。それから打ち合わせを重ねながら招待状や自分たちの準備に追われ、やっとこの日を迎えられた。

 大企業の跡取りである悠人さんは、個人の結婚であっても様々な人に報告する必要があるらしい。

 しかし、近しい人はほんの数人でほとんど招待客のいない私を気遣ってか、結婚式は身内だけで行おうと言ってくれた。

 悠人さんのお父様も了承してくれて、後日改めて企業向けに結婚報告のパーティーを開催する予定をしている。
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