離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
　三代続く『あいの豆腐店』を自分の父親から受け継いだ父は、『うちに今があるのは地域の人のおかげだ』と口癖のように言っていた。

　自身の経験から常日頃地域の人たちを最優先に考えていた父は、大手の仕事を受け、そのことで店に影響が出るのを恐れていたのだ。

『大手の仕事でいっぱいいっぱいになり、今まで通り店に豆腐を並べられなくなったら困る。俺にはこの小さな店を守るのが精いっぱいだから』と。

　しかし、高城の父のうちの豆腐に対する思いは強く、自ら何度も店に通って頭を下げる高城の父の熱意に心を打たれた父は、その後シュペリユールと契約を交わした。

　豆腐はシュペリユールの経営する都内のふたつのホテルやホテル内のレストランで使われ、父は店にも変わらず商品を並べていた。

　それから父と高城の父は互いを敬うようにあっという間に公私ともに親しくなり、時折プライベートで店を訪れる高城の父に父が料理を振舞ったり、私が幼かった頃は私も連れられて何度か三人で食事に出かけたりもした。
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