離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 人はひとりでも自分を信じてくれる人がいれば、また必ず歩き出せる。私はなにがあってもこの手を離さないと決めた。

 ベールを持ち上げられ、悠人さんと視線が絡み合う。

「愛してるよ」

「私もこれからも愛しています」

 私たちはかけがえのない人たちの前で誓いの口づけを交わした。

 父や母も見ていてくれているだろうか。

 私を生んでくれてありがとう。ふたりのように、私もともに生きていきたいと思える人に出会えたよ。

 誰よりも優しくて、温かくて、私を想ってくれている人。

 唇が離れて再び目が合えば、私たちは愛おしさが溢れ出してどちらからともなく抱き合った。開放的なチャペルの天窓からそそぐ太陽の光が、私たちを祝福するように明るく照らしてくれていた。





                 fin.
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