離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「お家に帰ったら飾ろうね」

 私が笑顔を向けると、樹里は「うん!」と元気に返事をする。

「そろそろ帰ろうか」

 公園で一緒に遊んでくれていた悠人さんも樹里を追いかけてきて、そう言いながら私の傍らにあった荷物を抱えた。

「えー。もっとあそびたい」

 樹里が、不満そうに口を尖らせて悠人さんを見上げる。

 私が「じゃあ、もうちょっとだけ……」と言いかけたところで、悠人さんが樹里の前へ屈み込んだ。

「樹里。せっかくママにあげた綺麗なお花、早くお水の中に入れてあげないと枯れちゃうかも。帰ってパパと飾りつけしてママに見せようか」

 悠人さんの言葉に、樹里がぱっと目を輝かせる。

「かざりつけする!」

 両手を胸の前で振り今にも走り出しそうな樹里を見てふっと笑みをこぼした私は、顔を上げて悠人さんに視線を送った。
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