離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 マンションに着くと、手を洗った私は帰り道悠人さんに抱かれて寝てしまった樹里の代わりに、摘んでもらった花を背の低い花瓶に入れてキッチンのカウンターへ飾った。

 小さな手に握りしめられた白い花はわずかにくたっとしていて、私のために一生懸命取ってくれたのだと思うと、温かな感情が心を埋め尽くした。

 一生枯れなければいいのに。子供が生まれてから、私はよくおかしなことを考えるようになった。

 今のように限りがあるものの永遠を望んだり、樹里の成長が喜ばしいのと同じくらい、いつまでも舌足らずのまま『ママ』と呼んでほしいと思っていた。

 矛盾しているのはわかっているけれど、どちらも本心なのだ。これが複雑な親心というやつなのだろうか。

 私の両親も、こんなふうに考えた経験があるのかな。

 そんなことを考えていると、樹里をベッドへ連れていってくれていた悠人さんが寝室から戻ってくる。彼は私の姿を認め、ゆるりと口角を上げた。
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