離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「ママもパパも待ってるからな」

 柔らかな声色で話しかける悠人さんを、心の底から慕わしく感じる。

「私、コーヒー淹れてきますね」

「俺が淹れてくる。いいからまつりはゆっくり座ってて」

 キッチンへ向かおうとしていた私をダイニングチェアに座らせた悠人さんが、一瞬口づけてからキッチンへと消えていった。

 すぐに軽く食器のぶつかるような音がして、コーヒーのほろ苦い香りが漂ってくる。

 椅子の背もたれに背中を預けた私は、花瓶に揺れる白い花を眺めながらできるだけお腹に顔を寄せた。

「優しくて、愛情深いパパがいるよ。きっとあなたを心から愛してくれるから、つばさも安心して生まれてきてね」

 まだ見ぬふたり目のわが子にひっそりと告げる。
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