離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 炭酸のピリッとした刺激のあとに、フルーティーな味わいが口の中に広がる。白ワインをベースとした味と生姜のような香りが鼻に抜け、頭がすっきりとしていった。

 まさかそのままバーへ誘われると思っていなかった私は、正直当惑していた。

 横目でたしかめると、高城と視線がぶつかる。無理やり口角を上げた私に、男は優しく顔をほころばせた。

 今までこの男に会うために、この男の取引先の人や、かかわりのある人をとにかく調べてはその人たちが行う食事会に参加してみたり、高城が顔を出す店があると聞けばその店に何度も通った。

 それでも一度もその姿を拝むまではできなかったのにな。まさか知り合った当日にバーでふたりきりで飲む日が来るなんて。こうして隣同士で座っているのが夢のように感じる。

 会員制のバーという格式高い空気感のせいか、私の緊張も増していた。

 パーティーではシャンパンを軽く飲んだだけだったし、ほとんど素面に近い。このままでは緊張からなにかボロが出てしまわないかと心配になり、私は再びカクテルを飲んだ。
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