離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「結婚して、なにをしようとしてるんだよ」

「危ないことはしない。ただ、あの男にもお父さんと同じ気持ちを味わわせたいだけ」

「やめろよ。どうするのかは知らないけど、復讐するつもりならそんなことをしても誰も幸せにならないぞ。親父さんだってお前が復讐なんてして喜ぶわけない」

 郁実の言葉に、私は悲しみに胸を震わせられて目を伏せる。

「わかってる。でも、このままではいられないの。あの男に復讐しなきゃ、私は前へ進めない」

 父が亡くなったあの日から、私の時間は止まっていた。

 郁実の言うように、復讐など諦めたほうがよいのではないかと悩んだときもある。

 温厚で、近所に困っている人がいれば率先して助けにいくような人だった父が、こんな事態を知れば悲しむのもわかっていた。
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