離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
『ここはもうまつりちゃんの家。なにかあっても、なくても、いつでも帰っておいで』

 私がひとり暮らしを始める日の朝、梅原家を出ていくときに叔母がかけてくれた言葉を今もときどき思い出す。

 私は噛みしめるように、ひと文字ひと文字ゆっくりと婚姻届に記入していった。

 いよいよ高城まつりになる日が来たんだ。

 高城という文字を見ているだけで手に力が入り、ペン先がぐっと紙に食い込むのがわかる。今度から自分の名前を書くごとにこの男への憎しみを身に沁みて感じるのだろう。

 署名捺印を終え、私は「できました」とペンを置いた。

 手に取った婚姻届に視線を走らせた高城が、満足げに顔をほころばせる。
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