離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる

　私はグラスの中に入ったフルーティーな香りがする琥珀色のシャンパンをひと口飲み、グラスを近くのテーブルに置く。

　男を捜そうと一歩足を踏み出したところで、まもなく突然現れた大きな影に進路を遮られた。

「おひとりかな」

　声をかけてきたのは、五十代くらいの小太りの男性だった。ブラウンのスーツを着た小太りの男性は、赤ワインの入ったグラスを片手に私の前へ立ちはだかっている。

　頬骨を持ち上げているその男性は、上機嫌に見えた。

　こういった企業パーティーなら普通これから親しくなりたい企業の人間に話しかけるのに、私のようにひとりでいる女性に声をかけてくるなんて珍しい人だな。

　そう思いつつ私が「……はい。そうですけど」と答えると、一気に距離を詰めてきた男性にいきなり肩を引き寄せられる。