離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 もし高城にそんな提案をされれば、私はまさにそのように答えていただろう。まだ出会ったばかりにもかかわらず、早くも性格を見抜かれていて正直少し驚いた。

 男には身寄りがないと伝えていたのであくまで奨学金と言い、叔母家族のことは話せなかったのに。カフェでの仕事も好きだし、やめろと言われなくてよかったのだけれど。

 しかし、家事に関しては『今までだってハウスキーパーにお願いしてるんだから君はそんなの気にしなくていい』と言われ、『できるだけやりたいです』という私の意見は却下された。

 さすがになにもしないのは私が耐えられないので隙を見て掃除や洗濯などをやっていたが、見つかれば取り上げられてしまう。

 もしかして私の家事能力が心配されているのでは? と思い、一度『今まで仕事と家事をやってきたので大丈夫ですよ?』と告げると、『君に無理させたくないんだ』という返事がきた。

 とりあえず気遣いだとわかったけれど、これに関して男は頑なだった。

 そして初めての夜に身体を合わせてから、私は照れくさくてうまく高城と目を合わせられないでいた。
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