離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 敵地に足を踏み入れる気分になった私の心臓が波打つ。エレベーターの中に敷かれているカーペットを踏みしめていた私は、そこでふと気がついた。

 私、こんなラフな恰好で大丈夫なのかな。

 カフェでは毎回制服に着替えるため、仕事のときはいつも比較的に着替えやすい恰好を選ぶようにしていた。

 シュペリユールほどの高級ホテルなら、食事をする店でもきっとドレスコードがあるよね。このままじゃ食事どころか、入店すらできないんじゃ……。

「あの、悠人さん。私こんな格好なんですけど大丈夫ですか?」

 扉が開き、エレベーターを降りたところで高城に問いかけた。私の言葉に、高城は「だから先に寄るところがあるんだ」と告げる。

 先に寄るところ?

 そう言って高城に案内されたのは、ホテル内にあるサロンだった。

 そこで高城に用意されていた落ち着いたブルーのレースワンピースに着替えさせられ、ついでにヘアメイクまで施された私は、担当してくれた女性従業員によって高城の前へ差し出される。
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