離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「すみませんでした。このお豆腐が、本当においしくて。とても気に入ったので家でも食べられたらと思うんですけど、一般家庭でも手に入れられるものですか?」

 なんとか平静を装いつつも、わずかに声が上擦ってしまった。しばしの間沈黙が流れ、みるみる焦燥感が高まっていく。

 高城の目が、豆腐の入った小鉢を捉えて細められた。

「昔は仕入れだったらしいんだけど、俺が入社した頃からこのレストランの厨房で毎日手作りするようになったんだ。今度特別に持って帰れるか相談してみるよ」

 高城の返答に、先ほどの考えが確定的になっていく。

 仕入れだったらしいなんて白々しい。その仕入れ先を切ったのはあなたじゃない。

 かつてはうちから仕入れていたのに、シュペリユールはなんだって豆腐を手間のかかる自家製に変えたの?

 それにシュペリユールが豆腐を自家製に変えた時期と、父が契約解除された時期は見事に重なっていた。
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