これを愛というのなら
繁忙期が1ヶ月も経つと、疲れも少しずつ溜まってくる。


A棟の社員の人達の指導も、この時期は私がしていることもあって、何かと忙しい。

その間にも、下見や打ち合わせにくるカップルもいて。


蓮は、蓮でレストランと披露宴の料理の仕込みに、仕入れにと何かと忙しい。


「繁忙期くらいは、仕入れは業者さんに頼んで配達してもらえばいいのに?」


そう言ってみたことがあるけれど、


「自分の目で見て納得したものじゃないと、使いたくねぇんだよ」


と、言われて。

言葉が見つからなかった。


それは、


若くして、ここまでの腕になるのにどんな道を歩んで来たのかはわからないけれど、

料理への情熱と、向き合う姿勢、一切妥協しないプライドを持って、

好きなことを仕事にしている蓮が、輝いて見えたから。


私だって、この仕事が好きで。

好きな仕事を出来るって幸せな事だなぁって。

どんなに辛くても、きつくても。

私なりのプライドと情熱を持って、続けてきたつもりだった。


だけど、蓮には敵わない。



今、思えば。

そう思ったことも、蓮に知らず知らずのうちに惹かれていた事の、ひとつなのかもしれない。
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