これを愛というのなら
「明日の大掃除が終わったら休みだろ?何処か行きたいとこねぇの?」


お互いに、仰向けに寝転んで。

私の頭は蓮の腕に預けている。


「そうだね。蓮と付き合うようになる前は、実家に帰ってたから…どこに行っても人が多いし…特にはないけど…蓮は行きたいとこないの?」


蓮の肩に寄り添って答えると、そうか、と。

顎を擦りながら。


「俺も行きたいとこは特にないしな…行くか?梓の実家に」


何か考えてると思ったら、えっ?それって……


「一緒にってこと?」


「そうだけど」


それに俺の実家にも、明々後日に行くか、と。



「ちょっと待って!」


ガバッと起き上がって、蓮を見ると。

なんだよ?と。


「梓の親に挨拶しとこうって思っただけだ」


なんて、突然……

付き合ってますって、

一緒に暮らしてますって、わざわざ挨拶に行くの?

まさかまさかの、結婚宣言?

いやいや、それはそれで今の私は困る。

まだ、あともう少し仕事を続けたい。


勝手にパニクる私に、蓮は笑いながら。


「なんで百面相してんだよ?付き合ってますって、そのうち梓を貰いに来ますって言うだけだ」


えっ?えぇぇっ!?

そんなことを、さも当たり前のように言われても。


「いやいや…そんな事を今、さらっと言わないでよ!」


蓮の腕をバシバシ叩きながら言うと、だから痛いだろって、言ったあと。


「ちゃんと考えてたんだよ。梓とのこれからのこと」


なんて……また、さらっと言ってくれる。

ジワりと、瞳に生温いものが浮かんだのがわかった。


「まだ…泣くの早いだろ?」


指で、それを掬って笑った蓮は。


「梓のことだから今、プロポーズとかしても受けてくれねぇだろうなって…だから時期が来たらって。先手を打っといたら、安心だろ?梓の親も」


そう言って、起き上がると。

私の身体をまた、仰向けにして。

その上に跨がって。


「どうする?そのうち、俺と実家の洋食屋を継いでくれるか?」


また、蓮らしい遠回しのプロポーズ?

嬉しいんだけど、

仰向けにされたせいで瞳に溜まってた涙が、耳に流れ落ちたんだけど、


「そのうち、ちゃんと蓮がプロポーズしてくれた時に考える」


素直に、はいって言えない私はやっぱり、可愛い気のない答えになってしまう。


「可愛くねぇな」


笑いながら、でも、と。


「そのうち、ちゃんとプロポーズするから気長に待ってろ」


私の答えを待たずに、指を絡めて手を繋いで。

私の唇を奪う。


唇が離れた瞬間の蓮の瞳は妖艶で、吸い込まれるように、

自分から蓮の唇に、もっと、と求めにいく。


それから、蓮と身体を重ねて。

幸せな戯れの合間に、サイドテーブルに視線を向けた蓮が。


「誕生日…おめでとう」


日付、変わった。と私の奥深くへ身体を寄せて、

激しくて甘い甘いキスをくれた。




今までの人生で、一番幸せで。

一番嬉しい、誕生日。

ありがとう、蓮。
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