異世界転生したから、楽しくスローライフを送りたい!!
そんなことを話しつつ、森を抜けると、そこには大きなお屋敷があった。
いきなり開けた視界の先に現れた、大きなお屋敷に私は目を丸くする。

「この森の魔女の家と、辺境伯の屋敷は意外と近い。でも、それは知られていないんだよ。だから、これは秘密だよ」

ニコニコと楽しそうに話すルーチェさんに、私は頷いて答えた。

「うん。言わないよ」

「さぁ、行こうか。今の時間なら、執務室にいるだろう。お邪魔しようかね」

裏口と思しきドアを開けて、勝手知ったる様子で入っていくルーチェさんに続いて、私とリーネも入る。

その時、かすかにチリリンと鈴の音が聞こえた気がしたが、二人ともそのまま進むので、私も続いて進んだ。

階段を上り、二階の奥の部屋にたどり着くと、さすがにそのドアはノックした。

『トントン』

「どうぞ」

ドアのノックに、中の人物はあまり驚いた様子もなく答えてくれて、ルーチェさんもためらいなくドアを開けた。

開いたドアの先には、リーネに少し似た三十代後半くらいの男の人がいた。

「お久しぶりですね、薬師の魔女様。それに、リーネ伯母さまもご一緒ですか」

穏やかな口調で話す男の人は、私を見つけると少し驚いたものの、私たちに椅子をすすめてくれた。

「伯母さまの手紙は、僕に無事届きました。彼女が、シーナ嬢ですか?」

「えぇ、クランツ。私がお仕えした、お隣のウォレント侯爵家の末の姫様よ」

「確かに、とても大きな魔力を持っていますね。そんな子をしっかり養育せずに、そのまま捨てるとは。侯爵家ともあろうに、実に愚かですね」

辺境伯様はいい笑顔で、バッサリ切り込みました!!
まぁ、自分の子をしっかり育てず捨てるとか、ダメ親だと私も思うけどね。
人任せで、ちっとも自分たちは見ていないからね。
世界変われば、立派な育児放棄ですよ。
他人任せで衣食住に困らなくても、親子関係と情緒は破綻しちゃうからね!
前世の記憶のおかげ、身体六歳でも中身アラサーだから情緒が無事なだけである。
親子関係は、もはや顔すら知らないわ! ってやつです。
立派に破綻しています。
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