時空とか次元如きが私とレイきゅんの邪魔をしようなど……笑止!!
「ねぇねぇ、レイきゅん、私を愛しているって本当??」
「ああ。本当だよ」
「いつから? 嘘じゃないよね? 嘘だったら私凄くショック受けるよ」
「嘘じゃないから。……それでフェルチアは、いつから僕を好きなの? あの『魔王』がフェルチアは此処にいるべき存在じゃないって言ってた」
レイきゅんがそんなことを言う。その黄色い瞳が私のことをじっと見据えている。
ああ、レイきゅんに見つめられるとドキドキしちゃう!! それにしてもあの『魔王』、そんなことを言っていたのね。
それにしても何て言おうかな。私って大分異端な存在なんだよね。レイきゅんが私を愛してくれているって言ってくれたけど、引かないかな?
「レイ、私、大分重いけど引かない?」
「今更、フェルチアに引かないよ。今までだって引かれるぐらいのこと、散々していただろう」
「そんな私を好きだって言ってくれるなんて、レイの心が広すぎる。天使!!」
「……はいはい。いいから話の続きをするよ」
レイきゅんにそう言われて、私はよし、レイきゅんに話すぞと決意して口を開く。
「あのね、レイ。私ね、レイのことをずっと昔から知ってたの。生まれる前からレイのことを知ってたの。何て言えばいいかな。私が生まれる前、違う世界で別人として生きていた時にね。この世界がモチーフの物語があって、そこでレイのことを知って。私、レイの事、大好きってなったの!!」
こんな突拍子もない言葉を口にして、レイきゅんが信じてくれないってこともあるかなと思いながらも本当のことだからベッドに腰かけたまま私は告げる。
「私ね、この世界に転生した時に、もしかしたらレイがいるんじゃないかって!! 期待したのね。でもね、私が生まれたのって今よりずっと先だったの!!」
「先……って?」
「私ね、今の時代からずっと先の未来に転生したの! そこでね、商会の娘として生まれたんだけど。ある時ね、私の大好きなレイが闇落ちしてとっくに死んでいることを知って……」
「えっと、僕そんな風になってたの?」
「そうなの!! それでね、私ショックで。愛しいレイがそんな風になくなってるなんてって!!」
ああ、もう私こんなにペラペラしゃべって大丈夫かな。でもレイきゅんが嫌な顔はしていないから大丈夫なのかな。ドキドキしながら私は話す。
「それで落ち込んだ後に私はレイに会いに行きたいっておもったの。幸いにも魔法がある世界だからどうにでも出来るのではないかって思って。それでね、五十年ぐらいかけて自分を過去に飛ばすことに成功したの!!」
こうやって元気にかたらないとやってられない。レイきゅんに引かれたら嫌だなぁ。そう思いながら私はどんどん語っていく。
「――それで生のレイに会って、やっぱり大好きだなぁって。生のレイの方がとても素敵で。私はレイの事を幸せにしたいって思ったの! 私なんて前世や今世も含めてレイよりもうんと精神年齢も年上だし、レイに会うためだけに此処まで来ているからレイからしたら引くことかもしれないけれど、私レイの事が本当に大好きなの!! レイが誰かのものになったら暴走しちゃうかもってぐらいで、レイが一緒にいてくれて、レイが笑ってくれるだけで幸せなの。だから、レイ、あの……私の事、引かないでね? 引いてもいいけど、私のことを受け入れてくれるとたすか――」
「だから引かないっていったでしょ」
私がいっきにまくしたてればレイきゅんにそう言われた。
レイきゅんの方を見たら、レイきゅんは優しい顔をしていた。鼻血でそう。可愛い。素敵!!
「――フェルチアが、前世の記憶があるとか、違う世界で生きていたとか、僕のことをずっと知っていて、未来から来たっていうのも、ずっと年上だって言うのも驚いたけれど……、だからって引かないよ」
「本当?」
「本当。大体、今の僕がいるのはフェルチアのせいなんだから。フェルチアがいたからこうなってるのに、今更僕の側からいなくなるなんて無責任なことは許さないよ」
鋭い目つきでそんなことを言われて、私は思わずときめいてしまった。
というかレイきゅんは、そんなに私に依存してくれているの? 私のことを愛してくれているってこと?
嫌いな人にこんなことを言われたらぞっとするけれど、私の愛おしいレイきゅんがそういうことを思ってくれているってだけで私の胸はずっときゅんきゅんしているの!!
「あああああ、レイきゅん、かっこいいいいい!!」
「はいはい。僕もフェルチアのこと、可愛いと思っているよ。びっくりするぐらいおかしくて、魔法が凄く上手で、無茶ぶりばっかりかましているけれど――僕はフェルチアが無条件に僕のことを愛してくれて、好きだって言ってくれるのが心地よかったんだよ」
「あああああ、もう素敵!! 幸せ!! 死んでもいい!!」
「死ぬのは駄目だよ。僕はフェルチアと生きていきたいんだから。というか、僕はフェルチアが死んだら不幸になっちゃうから。僕を幸せにするためにも生きてよ」
何この台詞。やばくない? 乙女ゲームのスチルでもなかったような素敵台詞!!
死ぬのは駄目だよね。こんなに可愛くて素敵なレイきゅんが私のことを好きっていってくれているんだもの!!
私はレイきゅんと生きる!!
「生きる!! 絶対にいきる!! 誰が現れてもいきるし、レイきゅんのことを私は絶対に幸せにし続ける!! 誰が現れても邪魔なんて絶対にさせないし!! 『魔王』の時みたいに不覚はとらないわ!! レイきゅんのことを誰にも傷つかせない。私がレイきゅんを守って見せる!!」
「いや、僕の方がフェルチアの方を守るから。まもられっぱなしは僕も男として嫌だから。フェルチアは僕に大人しく守られてればいいよ」
頬に手が伸び、レイきゅんが真っ直ぐに私の目を見てそんなことを言うから、ときめきすぎて私は倒れそうになった。
しかも「は、はいいい」と戸惑いながら頷く私にレイきゅんの顔が近づいてきて――キスされた。推しの顔が視界いっぱいに広がってドキドキしてしまった。
そして私はそのまま意識を失うのだった。
「フェルチア!?」
レイきゅんの焦ったような声が意識を失いながら聞こえてくるのだった。
目が覚めた後、トアーノちゃんや第一王子たちにも心配された。お見舞いされ、レイきゅんが私が倒れている間にどれだけ心配していたのかも聞いた。
レイきゅんは恥ずかしがるかと思ったのに、「僕がフェルチアを心配するのは当然だから」なんて素直に言うから、私の方が恥ずかしくなった。というか、レイきゅん、今ままで私がグイグイいっても照れてそっぽむいたりしていたのに、今はすっかりグイグイ来るんだけど!!
しかも後から聞いたんだけど、レイきゅんが前に何とも言えない表情をしていたのは、私が何でも出来るからって、色々苦悩してたんだって。
レイきゅんはレイきゅんであるだけでいいのに、そんな風にいじらしく考えてくれていたと思うとレイきゅんへの愛が溢れちゃうよね。
「ねー、レイ。ずっと一緒だからね。私の重すぎる愛をレイは受け入れてくれたんだから、この後、私の愛が重いって嫌がっても駄目だからね!! 逃がさないからね!!」
「僕もフェルチアを離す気はないよ。逃げるなら閉じ込めちゃうかもね」
「ふふふ、レイが望むなら閉じ込められても全然問題ないよ!!」
「……本当にフェルチアは僕をなんでも受け入れるね。何に邪魔されてもフェルチアがいるならどうにでもなるって思えてくるよ。そういう前向きな気持ちを与えてくれるフェルチアは凄いと思うよ」
「当然だよ!! だって時空とか次元如きも私とレイきゅんの邪魔なんて出来ないんだよ! 時空に阻まれても、次元に阻まれても私はレイきゅんの元にやってこれたし、レイきゅんと今幸せになれてるんだよ!!」
そう言い放てば、レイきゅんが私に向かって笑いかけてくれる。
なんて幸せなことだろうか。
これからも私とレイきゅんの日々を邪魔させない! 誰が来ようとも何が起ころうとも、何が邪魔して来ようとも、私はレイきゅんの傍に居続ける!!
――時空とか次元如きが私とレイきゅんの邪魔をしようなど……笑止!!
(何があっても私はレイきゅんの傍にいる。時空に阻まれても、次元に阻まれても――私はレイきゅんの傍にいる。誰にも私とレイきゅんのことは邪魔させない。全部蹴散らしてみせる)


