時空とか次元如きが私とレイきゅんの邪魔をしようなど……笑止!!
「君がフェルチアか」
「そうですが。私に何の用ですか?」



 私は名前を呼ばれて、そちらを見る。



 村の人ではない。何だか貴族っぽい雰囲気? この次元にやってくる前に通っていた学園で貴族の従者とかがこういう雰囲気だったと思う。



 もしかしたら貴族関係者なのかもしれない。でも私には正直言ってどうでもいい。でも何で私の名前を知っているんだろうか?
 そう思いながら彼らを見れば、その中のリーダー格の人が私に向かって話しかける。




「凄い子供がいると噂になっていてな。領主様が是非とも君に会いたいと言っているんだ」
「へぇ、そうなんですか」





 私は正直領主だとかなんだとかに興味はない。だけど頷きながら、打算的な事を考えていた。私の愛しいレイきゅんを幸せにするためには権力もあった方がいいかもしれない。
 私は強さには自信はある。レイきゅんをどんな敵からでも守れる自信はある。私はレイきゅんさえいればなんだってかまわない。レイきゅんが幸せに笑ってくれるならそれでいい。



 でも――私が思う幸せをレイきゅんに押し付けたいわけではない。私はレイきゅんが押し付けられた幸せではなく、心から幸せになってくれることを望んでいる。



 だからこそ、私は考えた。
 ――レイきゅんのためにこの時代の貴族をとことん利用してやろう! と。





「ふふ、では取引と行きましょう」



 そう私が口にした瞬間、何だかその人たちは青ざめていた。何だろう、なんか漏れてたのかな? 私はただレイきゅんを心から幸せにしたいだけなんだよ!



「……取引とは?」
「私は私の天使を幸せにするためになんだってやりたいの。私の天使を幸せにするためだけに私は此処にいるの。——だから、私のレイきゅんを幸せにするのを手伝ってほしいの。それを手伝ってくれるなら、私は貴方達に力を貸しましょう。自慢じゃないけれど、私はとっても強いから」



 私はそう言い切って、笑顔で彼らを見た。


 彼らはコクコクと頷いた。……何年か経ってから、「あの時のフェルチア嬢は恐ろしかった。『魔王』か何かと取引を交わしている気分だった」などと言われてしまったのは別の話である。











 というわけで、私の私によるレイきゅんを幸せにするぞ計画を着々と進めている私だよ!




「……あのさ、何でフェルチアが呼ばれているのに僕も一緒に行くことになってるの?? というかフェルチアはとても強いんだから、僕のことなんて気にしないで、一人で領主の所にいったらいいのに。そしたらフェルチアはなんだって出来るし、何にだってなれるのに」



 私とレイきゅんはただいま領主の元へ向かう馬車に揺られている。正直、私が魔法を使って移動したほうがはやいんだけど、はじめてのレイきゅんとの馬車旅っていうのを私は経験したかったの。それに高速移動はレイきゅんに負担をかけそうだし。




 それにしても馬車に揺られながら戸惑っているレイきゅんも可愛すぎる。もう私の心は興奮してならないよ。本当に生で推しを見れて、推しと同じ空気を吸えて、推しが私の名前を呼ぶとか、私は毎日が幸せの絶頂だよ!!
 それにしてもレイきゅんがよく分からないことを言っている!





「レイ、何言っているの? 私はレイが一緒じゃなきゃいかないよ? 私が強くなったのも私が今ここにいるのも、私が領主の元へ行こうとしているのも、全部が全部レイを幸せにしたいからなんだよ。私がやりたいことはレイを幸せにしたいんだよ。だからね、レイ、ずっと幸せそうに笑っててね。それが私の幸せなんだから」




 ――ずっとずっと、前世からずっとレイきゅんが大好きだった。レイきゅんの事を愛していた。二次元のキャラに何を言っているんだって散々言われても、私は現実の男性よりもレイきゅんのことが大好きだった。



 そして転生してからレイきゅんが闇落ちして死んだことを知って、どれだけ心が痛んだだろうか。



 ――会えることもなかったレイきゅんに、自分の力で会うことが出来た。そしてこれからレイきゅんが不幸になる前に、レイきゅんを幸せに出来る。



 そう考えるだけで私は幸せだった。




 だから口にしたのだけど、レイきゅんはそっぽを向いてしまった。一緒に馬車に乗っていた領主の部下には何とも言えない表情で見られちゃうし。



 レイきゅんに引かれた!? ってガーンってなって「レイきゅううん!! ひかないで! 私、レイきゅんに引かれたら死んじゃう!!」って口にしたら「はぁ……引いてないし、嫌ってないよ」って言われた。呆れた目はしていたけどね!!







 そんな調子で領主の元へ行った私たちは、将来を見込まれて領主の後ろ盾を得たのである。

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