俺のカノジョは
「お、起きたの!?」
「ん」
「え、いつ……?」
「電話の途中?」
「ごめん、起こしたね」
「いやいいんだけど。それよりなにに俺が引くって?」
ソファーから頭をかきながら起き上がった。
再度問うように言うと、明らかに青ざめていく彼女は口をパクパクとさせる。
「なんでもないよ!?」
あくまで隠そうとする春香は両手を胸の前でブンブンとこれでもかと振ってみせた。
このにゃろ……また隠すのか。
じゃあ、これでどうだ。
「推しってなに? 推しは至高の存在ですって?」
電話の内容聞いてました、とわかる単語を口にする。
「そ、そんなところから聞いてたの!?」
「聞こえたの」
「いや、あの、えっと……」
「俺、別に引かないと思うけど? そんなに信用ない?」
「そんなことないっ……」
「じゃあ話して?」
座っていたソファーから降りて、春香の隣に腰を下ろした。
向き合った彼女はキョロキョロと視線をさまよわせ、唇を噛んでは考え込む。
部屋の中が無言に包まれた。
震える唇が開いたのは、5分程経ってからだった。
「あの、わたし…………オタクなんです」