例えば世界が逆さまになっても




中学高校となかなか身長が伸びなかった俺は、高二になっても女子の平均ほどしかなく、そのうえかなり丸い体形をしていて、外見については相当なコンプレックスを持っていた。
おまけに、極度の近視でメガネは必需品、外見のコンプレックスも一因してか、かなりの気弱で人見知り、口下手で暗い性格に引っ込み思案だった。

通っていた中高一貫の男子校は少人数制だったこともあり、同級生達は遠い親戚感覚とでも言えばいいのか、とにかくアットホームな感じで、俺の外見や気質のせいでいじめに発展するようなことがなかったのは、今から思えば幸運だったのかもしれない。
いや、何も、背が低くて太っていてメガネをかけていると同級生からいじめられる…と言いたいわけではない。
俺の場合は、それだけではなく、人見知りやネガティブな性格が悪い方に表れ出て、常に俯きがちで、オドオド、イジイジしてるような、陰鬱な空気を放ち続けていたのだから、周囲の人間には不快感を与えてしまっていた自覚はあったのだ。

いじめられても仕方ない人間なんていないが、当時の俺は、自分から見ても、決して問題がないとは言い難い生徒だったと思う。
でもそんな俺を、クラスメイト達は誰も悪くは言わなかった。むしろ、人見知りで引っ込み思案で口下手な俺を、誰もが気遣ってくれていたように思う。

けれどそれは、あくまでも学校内での話だ。
身内感覚のある校内を出てしまえば、俺に嫌悪の眼差しを向けてくる他人はそこかしこにいた。


そしてあの日の下校中も、そうだった。








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