不器用同士


今日は満月で夜だけど、結構明るく感じた。



「タクシー呼んどいたから。乗って帰って」


相楽くんが指を指したところにタクシーが一台停まっていた。


「え、なんで?」


「そりゃ、こんな遅い時間に可愛い光莉ちゃんを1人にしたくないからだよ」


なんだその甘い言葉は。


普通に恥ずかしげもなく言うから反応に遅れた。



「……ありがとう」


もう呼んでるから断れないし。



「じゃあね、光莉ちゃん」


「うん、また明日」


私と相楽くんの間に生ぬるい風が吐き抜けた。


ひらひら手を振る相楽くんに背を向けて歩き出す。



「お願いします」


「はい。では、出発致します」


タクシーに乗り込み、住所を告げる。



特にすることもないので、流れていく見慣れない景色をぼーっと見つめる。



もしかして、相楽くんなりに気を遣ってくれたのかなと思った。


今日、おじさんに無理やり連れていかれそうになったからまた声をかけられたりしたらと思うと1人で歩くのは正直怖かった。


それを見透かされた気がする。

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