明日、雪うさぎが泣いたら
心を乱された仕返しとばかりに、姫と呼んだのもわざとらしい。
「望んではいませんが、その。これまで言われたことから総合的に判断して、ある程度覚悟していた方がいいかなと思ってたので……」
とても、一人では来ることも帰ることもできなさそうな。
囲うのが無理なら、そもそもその必要もなさそうな部屋。
「実を言うと、それを含めて迷った。結局のところ、私が如何にお前に甘いかということだ。だが、これからは、何の見返りもなく甘やかしたりはしない」
大きな溜め息をしっかりと聞かせ、腹いせの延長とばかりに口づけをひとつ。
たった一度だけ、側頭部に触れただけなのに、暴れるどころか体が硬直して動けない。
たっぷりと時間をかけられたそれには、苛立ちの他にもたくさんの感情が混じり、詰まっているようで――何も求めないと言われるよりずっと、深い愛情を感じてしまう。
「どんな理由にせよ、私と過ごしてくれるのだろう? 夜にまた来るから、それまで長閑とのんびりするといい。一旦失礼する」
最初に開いた唇の形は、「はい」とは違う。
だから、一度口を閉じて、そう答えるほかなかった。
嫌々などではないと、「そんなことないです」とはまだ言えない。
「……それにしても、よかったわ。小雪の妄想ではないけれど、本当にどこか辺鄙なところに閉じ込められようものなら、私も絶対に暴れるもの」
絶対、自分だって似たようなことを考えていたくせに、長閑がそんなことを言う。
でも、一瞬にして重くなってしまった空気を換えるように切り出してくれて、ありがたい。
「長閑が暴れるの? 恭一郎様の前で? 」
「そうよ。その時ばかりは、小雪と一緒にね」