明日、雪うさぎが泣いたら


気遣いに感謝しつつ、想像して笑ってしまうと同時に、涙も浮かんでしまいそうになる。
冗談ぽく言いながらも、彼女は本気で言っているのだと伝わってくるから。


《しかし、私は安心いたしました。病んではいても、まだ姫に嫌われたくないという想いの方が勝っているのですね》

「ええ、本当に。驚いたけれど、ほっとしたわ」


顔を見合わせて頷き合っている二人を見ないようにすると、自然と庭へと目がいった。
本人が言うように、きっとものすごく悩んだのだろう。
だって、この部屋はこんなに整った庭が望め、その気になれば――あくまでも、私の場合は、だが――簡単に逃げてしまえそうだ。


(……? )


何だか切なくて、意識だけでも逃げてしまったのかもしれない。
コトンと物音がした気がして、反射的にそちらへ体が向いた。


「あっ、小雪!! 待ちなさい! 」


まだここに慣れていないからか、長閑の小言が随分小さいのをいいことに、好奇心を抑えられずにひょいと外を覗いてみると。


「ご無礼を。……本当にいらしたんですね」


あの時の子だ。
どちらかというと、庭に潜んでいたことよりもその呆れ顔の方が気になるのだけれども。
吹き出してしまいそうになるのを、どうにか堪えた。


「勘違いなさらないでください。貴女がここに住まわれることは、とても喜ばしいことだと思います」


それでも、この子に歓迎されないのは悲しい。
嫌われていても、私は彼に好感を抱いているのだ。


「私などが申し上げることではありませんが、あの方は分け隔てなく優しい方です。私のような身の上でも、平等に扱ってくださる。……だから、幸せになっていただきたくて」

「あなたの気持ちは分かったわ。でも、少し違うと思う。あなたは隔てられるような存在ではないし、そんなの関係なく恭一郎様はあなたを可愛がっているのだと思うの」

「……私が申し上げたいのは、そちらではありません」


言葉には含まれておらず、しかし一番伝えておきたいこと――。
それはすぐに察しがついたけれど、私はまだこの子を安心させてあげられる一言を言うことができない。


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