明日、雪うさぎが泣いたら
「もともと体温の高い子供が、信じられないほど熱くなっていて……なのに、ガタガタと震えているのを見るのは、本当に恐ろしかった。あの時ほど、私は自分を呪ったことはない」
頼もしい背中にくっつけた頬っぺたから伝わる振動、焦りや苛立ち、不安。
夢で見たものが一気に呼び起こされて、必死で首を振った。
「あれは、絶対に恭一郎様のせいでは……」
「いや。お前と話すと堂々巡りだが、やはり私はあのまま放っておくべきではなかった。だが、喜んでいるお前を見るととても止められなくて……結果、ああなってしまったのだ。私のせいでしかない」
そういうところは、兄様と変わらない。
主張が一貫しているし、こうなったら何があろうと譲ってはくれなくなる。
「もうあんな思いはしたくない。二度と繰り返さないと誓いながら、危険だと思いつつ私はここでお前といることを選んだ。……せめて、この私のせいであってほしい。他の男のせいにするのはごめんだ」
そんなことを言われたら、もう言えなくなる。
「あなたのせいじゃない」とも、「あの男の子に会いたがった私のせい」とも。
かと言って、思ってもいない「そうですね」などとは絶対言いたくない。
つまり、何も言えなくなってしまった私に苦笑して、代わりに話を進めてくれた。
「だが、本題はそれではないだろう? そういえば、家探ししたいと言っていたな。だが、あの頃お前が身につけていたものは、残念ながらもうここにはないぞ」
憎々しげに落ちたバレッタを見下ろす様子は、今もありありと思い出せる。
あれほど長いこと忘れていたくせに、本当に不思議だ。
「えっと……それはもう……そうだろうなと思っていたのですが、単純に知りたくて。夢では私をおんぶしてくれた拍子に髪飾りが落ちて……そのまま邸に送り届けてくださったのですけど。その後、どうなったのかなって」
そんなの承知しているとあっけらかんとしている私の額を、間接を曲げて少し尖らせた指の背でこつんと叩いた。