綺桜の舞う
29.空白の抗争
「ん……」


朝イチ、スマホが震えた気がして目を覚ました。
俺はぐっと背伸びをして目を開くとスマホを手に取る。
叶奏からの電話。
時間はまだ6時。いつもの叶奏なら6時半になっても起きてるか微妙なとこなのに。


「……もしもし」
『あ……湊くん』


電話を出ると、やけに掠れた声の叶奏。


「どした?声調子悪そうだけど」
『声だけじゃなくて、身体も死んだ……今日学校休む。……あの、心配しなくていいから、お願いだから、こないでね』


叶奏はそれだけいうとぶつり、と電話を切った。
……まさかの。


こういう時、本当にどうすればいいかわからない。
今日の俺が免疫弱ってない確信がない。
中学まではちょっとの風邪でもひいてる奴がいたら次の日は起き上がれなかったし。


ただ、叶奏が心配で仕方ない。
初めてあんなひどい声聞いた。


……看病。


俺はいつも通りに起き上がって朝飯の準備を始める。
今日は1人分でいい。
……。
< 243 / 485 >

この作品をシェア

pagetop