綺桜の舞う
黒服の、集団。
フードをかぶって、顔はよく見えない。
さすが、隠しているだけある。


「なっ、まじかよ」
「ごーごー!先に喧嘩を売ったのはそっち。
売られた喧嘩は買うまでだよん」


ふざけた伊織の声の後に、パチン、と乾いた指の音が響いて、抗争が動き始めた。


……酷い。


いや、夜桜側。
朔、蛍から夜桜陣営方面は、圧倒的に有利。
蛍もある程度強いらしく、傷もそこそこに朔と同じくらいの戦力とみた。


ただこっちは。
人数と戦力が合わない。
夜中の突然の抗争に、俺たちも流石に追いつかない。
伊織も、陽向でさえも、キツそうな表情。


……これは、やばい。


「お前ら〜、副総長調子よくないから近づけんなよ〜死ぬぞ〜」


なんだその気楽な声かけは。
俺をどうする気だ。


にっこり笑う伊織は確信犯。
流石の俺でもわかる、もう今日もほとんど終わり。


少なくとも俺の調子が悪いことは、ない。
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