綺桜の舞う








「あぁ……見つけた」










掠れた、声。
路地に響く、消しきれない透明感。


空間が、時間が止まったように静まり返る。


……どうして、ここにいるのか。


「こんにちは。夜桜総長、出てきてみたんですけど、やってみます?」


フードを間深くかぶった、叶奏の声。
少し息が荒いのは、まだ全開じゃないからか。


「あらら、出てきちゃった?」
「……彼氏さんの帰りが遅くて。不安になっちゃったよね」
「彼氏さん、心配性の彼女持っちゃったね〜。大丈夫なの?」
「大丈夫じゃなくても、潰さないと帰れないんなら、潰すよ?」


ふふっと不気味な笑い声。
いつもより、大人っぽい笑い方に、悪魔味を感じる。


「な……そう、ちょう……いなかったのかよ」
「ごめんなさい、本日野暮用で、倉庫には行ってなかったもので」
「……っ」
「片っ端から、いいですよ?
私が相手するので、早く終わらしましょう、ね?」
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