綺桜の舞う
これくらいのおもちゃみたいな手錠なら柵についた方なら荒々しい対処で外れるだろうか。


俺は一度叶奏をゆっくり横にすると、柵側の手錠を勢いよく蹴り飛ばす。
思った通り粉砕して、俺は叶奏を抱き上げるときた道を引き返した。


惨状と化した一階。
中心に残るは、華奢な身体に返り血を余すところなく浴びた伝説の総長。
おぞましいくらいの殺気を纏って、足元には幹部と思しき人間が3人。
いつの間につけたのか、耳には叶奏と色の違うピアス。
……ずっと、つけていたのだろうか。


「叶奏を病院にっ」


静まり返る空間に刺さった雪兎の言葉に俺は急いで伊織に呼んでおいてもらった車に走った。
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