綺桜の舞う
37.ひびわれ。


「調子は?」
「普通」


朝イチ、面会時間になって早々に伊織が俺の病室にやってきた。


あの抗争は3日前。
叶奏を病院に運んで、緊急入院を告げられたあと、緊張の糸が切れたかのように俺もナチュラルに倒れた。


叶奏のかかりつけの病院だから、俺は慣れてなかったけど、少なくとも私立病院の中でも高いとこだな、と納得がいく仕様だ。


「叶奏は?」
「昨日の夜中に意識取り戻したらしいんだけど、一言も喋ってくれないらしいんだよね。
診察のときも、頷くことはするんだけど他のは無反応。首を横に振らないんだってさ」
「……そ」


……。


様子から察するに記憶を取り戻したか。
それも……何か、思い出したくないようなことを。
総長、と叫んだあの叶奏の取り乱し方は異様だった。


あの叶奏が起きてすぐに陽向の無事をどうこう言わないのは、陽向に意識がいかないくらいの何かを、叶奏が思い出したのだろう。
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