綺桜の舞う

◇ ◇ ◇


『蛍は帰らない』
『夜桜の人間じゃなかったから、最初から』
『朔のところには、帰れない』


風が吹く。
木に葉っぱなんてほとんどついていないのに、サァーッと風の音が聞こえる。


城。階段を登った時計台の中枢部分。
視界には鏡写しの止まった時計。
いつもは2人で座って、何にもしないでただぼーっとしてるだけのこの場所で、俺は1人で座っている。


「あ、見つけた〜」
「……何?」
「学校行こう」
「俺にそんな元気あるように見える?」
「ないけど……でもここにいても何も始まんないよ」


雪兎はそう言って俺の隣に座る。


「雪兎だってここにいるじゃん」
「まぁね。この感じで学校行けるような精神、俺も持ち合わせてないんだわ」


とは言っても、陽向も沙彩も学校行ってるし、伊織も遅刻するとは言っていた。
なんだかんだ、学校に行ってないとやってられないって感じもある。


「……雪兎は、」
「うん」
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