綺桜の舞う
◇ ◇ ◇


「んで、叶奏ちゃんは走って出て行っちゃって、ケンカと?」
「……まぁ」
「あらまー、さすがに力あるだけあってあと残ってんもんねー」


手形、とまでは言わないまでも、赤く俺の左頬を染める今朝の惨劇。
朝からすれ違いざまにめちゃくちゃ見られた。
女子が走り終わってお昼休みの今、陽向からの連絡によると、姫野は現在、夜桜の面子(主に女子)とキャピついてるらしい。


「ま、それは全面的に湊が悪いよね〜。
可愛いとか、似合ってるとか、言ってあげないと伝わんないよ。
自分の気持ちだけ押し付けちゃったらそりゃ叶奏ちゃんも怒っちゃうでしょ」


女子愛好家、伊織はニヤニヤとそんなことを言う。
……なんでそんな嬉しそうなんだ。


「それにしても、あの?学年トップ、イケメンなのに笑わない、フった女は数知れずの堅物、立花湊が、女の子がらみでトラブって平手打ちの痕つけて学校にくる日が来るなんてね〜。世の中は無常だよ〜」
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