My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
ガチャ、とそのとき扉が開く音がして私は慌てて姿勢を正す。アヴェイラが帰って来たみたいだ。
「悪かったね。食事フィルが運んでくれたんだって?」
言いながら部屋に入ってきた彼女に私は笑顔を向ける。
「うん、おかえりなさい」
と、アヴェイラは私を見て不思議そうな顔をした。
「……どうかしたかい、カノン」
「え?」
「顔が赤いからさ」
ぎくりとして私はまだ火照りの引かない両頬に触れた。
「そ、そうかな。大丈夫だよ」
「そうかい? じゃあ、改めて明日の話をするがいいかい? 食べながらでいいからさ」
「うん!」
そうしてアヴェイラは明日の作戦を話しはじめた。
この船は明け方にはアピアチェーレ港の沖に着くらしい。そこで後からやってくるだろうグリスノートたちの船を待ち伏せる。
「で、のこのこ現れたグリスノートの前であたしが歌を披露する。ふふっ、楽しみだねぇ」
また悪い顔で笑ったアヴェイラに、私は気になっていたことを訊く。