My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】

22.マルテラ


「はい、これでもう大丈夫」

 女の子の腕に包帯を巻き終えたマルテラさんは、にっこりとその子に笑いかけた。



 先ほど剣を携えた姿は凛々しく見えたけれど、今の彼女は優しい看護婦さんのようだ。
 私は自警団の詰所で用意された椅子に座りそんな彼女を見ていた。ラグは椅子には座らず私のすぐ隣に立って女の子が手当てされているのをずっと見つめていた。
 ……ラグの術なら、きっとすぐに治る傷だ。本当は治してあげたいのかもしれない。でもこの場で、この街で術を使うわけにはいかない。
 この街でラグ・エヴァンスだとバレるわけにはいかない。

(でもマルテラさんは多分、ラグのことを知ってる……)

 あの後、私たちは近くにいた50代くらいの男性に是非お礼がしたいからとマルテラさんと共にこの詰所に連れてこられた。
 こちらもセイレーンの秘境についての情報を手に入れたいのだ。断る理由はなかった。
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