My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】


「でもそんな僕を、人は“金のセイレーン”と呼び、畏れ、崇めてくれた」

 彼は淡々と優しい口調で語る。神話を語るように。

「大地も、海も、風も、生き物も、僕にとっては大好きな音楽を奏でてくれる楽器なんだ。その中でも特に人間が一番のお気に入りでね。人間は僕の作った歌を奏でてくれるから。だから僕はたくさんの歌を作った。とても楽しかった。……でも」

 そこで、その瞳が憂いの色を帯びる。

「人間はいつか歌うことを忘れ、争いばかりするようになった」

 どきりとする。
 ――争い。戦争。
 人の歴史は争いの歴史だと、誰かが言っていたのを思い出す。
 私が元いた世界でも、この世界でもそれは同じで。

「面白くなくなった僕は、代わりに歌ってくれる別の世界の人間を喚んでみることにしたんだ」
「え……」
「そしてやってきたのは、君と同じ世界の人間だった」
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