My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】

「――ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 アルさんが困惑したように声を上げた。
 だが勢い付いたアジルさんは止まらなかった。

「儂は命からがら逃げのびたが、あの人も仲間も街の皆も、みんなみんな儂の目の前で炎に焼かれ死んでいった。儂は天罰が下ったんだと思った。奇跡の力を争いの道具として使おうとしたからだと。だから儂にもいつか天罰が下ると思い、そのときを待った。……だが、なぜか儂らの計画が表沙汰になることはなく、全てはストレッタのラグ・エヴァンスの仕業ということになっていた。儂は赦されたのだと思った。だから、儂は死ぬまでこの事実を隠し通し、この場所を封印することにしたんだ」

 アジルさんが話し終えると、空洞内はしんと静まり返った。

(じゃあ、ラグは……)

 いつの間にか強く握りしめていた手が震えた。
< 383 / 440 >

この作品をシェア

pagetop