My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「カノン腹減ってるだろ? 朝食持ってきてやったから食べな」
急に、目の前にパンの乗ったトレーが差し出されて驚く。
アヴェイラが呆れたような顔で私を見ていた。
「昨日はなんも食べずにあっという間に寝ちまうんだもんねぇ」
「あ、ありがとう」
そういえば、昨日一日何も口にしていなかったことに気づく。
明け方にあんなことがあって、それからずっと緊張の中にいたせいか空腹感がやってこないまま睡眠欲が勝ってしまったようだ。
「ふたりは?」
「あたしたちはもう食べたよ。さ、早く食べちまいな。今日も練習に付き合ってもらうからね!」
「うん! いただきます」
受け取ったトレーには硬そうなパンとチーズ一切れとお豆、そして水の入ったグラスが乗っていた。
向こうの船の食事に比べると大分質素だったけれど、今の私には十分なご馳走だ。