My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
椅子に座り、早速水で喉を潤してからアヴェイラを見上げる。
「私もこの船に乗っている間なにか……料理のお手伝いだったら少しは出来るんだけど」
「言ったろ? この部屋にいた方がいいって。それに、カノンにはあたしに歌を教えるって大事な仕事があるんだからね!」
「歌を?」
フィルくんがびっくりしたように声を上げた。
「そうさ、今あたしはカノンに歌を教えてもらってんだ。大分うまく歌えるようになったんだよ!」
胸を張るアヴェイラを見てぽかんとした顔をしているフィルくんに慌てて言う。
「歌って言っても、なんの力もないただの普通の歌だよ」
「そうさ、でもあたしは気に入ったね。グリスノートの前で歌うのが楽しみだよ」
「えっ、船長の前で歌うんですか?」
「そうだよ! あぁ、そうだ。そのことであんたに訊きたいことがあったんだ。グリスノートの奴が向かってんのはアピアチェーレの港で間違いないかい?」