片思いー終わる日はじめる日ー
 ひとを好きになるってすごく不思議だ。
 こんなふうに、(ばくビ)が、そこにいるかもしれないって思うと……。
 それだけで芸術棟のあの灯りが、バースデーケーキのろうそくの炎みたいに特別に見える。
「あっ!」
 あわてて口を手でふさいだけど、司書センセは立ち上がって、あたしの机の脇に来た。
 腰に両手をあてて、フン!
 鼻息荒く、あたしをにらむ。
 はい、すみません。
「……帰ります」
 帰りますったら。
 だって、灯りが消えたんだもん。

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