片思いー終わる日はじめる日ー
「球技大会って、部活やってる子も本職で出られるの?」
「うん! 今日からねぇ、特別に先輩たちが特訓してくれるの。こわーい」
 と言いながら。
 スコートをつまむ指が、うれしそうだぞ、井森。
「部活やってなければなぁ。うみともっと遊べるのになぁ」
 そうねぇ。
「また、期末の前にでも遊んでよ」
「そだ。うみもなにか部活やりなよ。そしたら、いっしょに帰れるじゃん」
「…………」
 バレーって言わないところが、いい子だよね。

 本当はあたしも迷ってる。
 このままでいいのかって。
 中井に絵を教わるっていうプランは、そこに(ばく)がいるってもうわかってるから、どうにも気まずいし……。

 バクって。
 そう呼んでもいいって、あたし…言われたよね?

 ううう。
 夢じゃないよね?
 考えるだけで背中がムズムズする。
「ところでさ」
 はい?
「バクくんと、なにか進展あるの?」
「えええええええっ」
「んぎゃあ」
 井森が耳をふさいで廊下にうずくまる。
 ゃ、ゃ、ゃ。
「ご…めん」
「んもう。そんなにわかりやすく動揺されると、からかえないからやめてよう」
「…………」
 そ…うね、今のは反応しすぎたわ。
 ちょうどバク呼びについて考えていたから――すまん。
「けどさぁ」ぴょんと立ち上がった井森があたしの肩に体重をかけてもたれてきた。
「みんなうらやましがってんだからね。あんたたち仲いいし。本当になんでもないの? バクくんとは」
「――ないわよ」
 ふたりっきりでいても、別に…なにもなかったもん。
 あんたみたいに、バク、バクって気楽に連発できる子に話したって笑われるようなことは…その…あったような、なかったような。
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