夢みたもの
『曲は?』



うつむいたままのあたしの前に、再び開いたノートが突き付けられる。



『曲も忘れた?』



「え?」


驚いて顔を上げると、あたしを見つめる真剣な顔の彼と目が合って、あたしは思わず息を飲んだ。

次に何を言われるのか分からなくて、凄く不安になる。

でも、彼の視線から逃げる事も出来なくて、あたしは黙って彼を見つめ返した。



『君が最初に現れた時、覚えていてくれたんだと思った』



ノートをあたしに見せると、彼は少し寂しそうに首をかしげる。


「それは・・・」


「違う」と答えるより早く、彼はあたしの手をつかんでピアノに向かって歩きだした。


「ちょっと・・・なに!?」


彼はピアノの前であたしの手を離すと、近くの椅子を引き寄せて、あたしに座るよう手で促す。


「でも・・・」



『ここは 君の場所だから』



あたしの肩に手を置いて、さっきよりも強く座るよう促す彼の迫力に、あたしは黙って椅子に座った。


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