夢みたもの
「そんな事する暇があるなら、真面目に勉強する方が早いわ」

「う・・・それは、分かってるけど・・・」


正統派の葵は努力を尊ぶ。

姑息な手段は自他共に許せないらしく、こういう話を耳にすると、呆れて軽蔑する傾向があった。


「大体、ひなこはいつも真面目に授業を聞いているんだから、後は理解力と応用の問題でしょ?」

「それって・・・根本的な問題じゃない?」

「そんな事ないわよ」


葵はそう言って肩をすくめると、机の上に広げっぱなしになっていた日本史のノートを指差した。


「い〜ぃ?誰が見ても分かりやすいノートを取るには、授業の内容を理解しなくてはいけないの。ひなこはそこが出来てるんだから、理解してるのよ、授業の内容はね?あとは、そこをどう応用していくかじゃない?」

「そこが難しいんだけど・・・」

「それは・・・」


口を開きかけた葵は、一瞬、教室のドアの方に視線を送って小さく笑った。


「葵?」

「それは、私じゃなくて、堤君に聞くと良いわよ?」

「・・・え?」


葵の視線を追って振り返ると、教室の端でクラスメイトと話をしている航平が居た。


「堤君は、ひなこの事を誰よりも理解しているもの。きっと、彼なら適切なアドバイスをくれる筈よ?」

「え?・・・あ、うん」


葵の言葉に、あたしは歯切れ悪く頷き返した。



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