夢みたもの
「俺は、ずっと昔から一緒に居て、ひなこの全てを見てきた」

「・・・・・」


あたしが何も答えないので、航平は静かにその続きを話し始める。


「ひなこの苦しみも、悲しみも・・・その歳で抱えるには重過ぎる現実を・・・出来れば少しでも、心の負担だけでも軽くしてあげたい。傲慢だけど、ひなこを守りたい、そう思ってきた」

「・・・・・」

「ねぇ・・・・もう、俺は必要ない?」

「・・・そんな、そんな事ない!!そんな事ないよ!?」


航平の突然の言葉に、あたしは慌ててそう言った。



こんな時、何て言えば良いのか分からない。

何て言ったら信じて貰えるんだろう・・・?


航平と離れるなんて・・・・

そんな事、考えられなかった。



「・・・待って、航平」


その言葉だけ、絞り出すように言えた。

無意識に体が動いて、航平の上着の裾をつかむ。

この繋がりを放してはいけないと思った。



「・・・ひなこ・・」


そう呟いてあたしの肩に手を伸ばしかけた航平は、傷に触れたかのように、小さく震わせて手を止めた。

何かに迷い、悩むように空に止めた手。

航平はその手を下ろすと、あたしを真っ直ぐ見つめて言った。



「ひなこにとって、俺はどういう存在?」



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