夢みたもの
「あ!別に悪い事じゃないわよ?」


あたしの反応に、美野里さんは慌てた様子で手を振った。


「時期が来れば、遅かれ早かれ、人は恋をするものよ?遅いからって悪い訳じゃないわ。・・・ただ・・・」


そこで一瞬間を置いた美野里さんは、何とも言えない表情をあたしに向けた。


「ただ・・・ただね?ひなこちゃんは、無意識にそういう感情を排除して、自分の気持ちをねじ曲げてる気がしたの」

「・・・・・」

「・・・違う?」

「・・・分かりません」


それしか答えられなかった。



恋なんて知らない。

知らなくていい。



理解出来れば幸せになれるのかもしれない、そう思った事もある。

でも、駄目だった。


誰かを愛すると、自分が自分じゃなくなるから・・・

誰かに愛される事は、怖い事の始まりだから・・・




「ひなこちゃん?」


その声にハッとして顔を上げると、美野里さんが心配そうにあたしを見つめて、冷たいあたしの手を握っていた。


「大丈夫?」


重ねられた手の温かさに、あたしは息を吐いて頷いた。




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