夢みたもの
日はすっかり暮れて、電灯の明かりの下を2人並んでゆっくり歩く。

居心地の悪さを感じながら、あたしは何度も荷物を持ち直すフリをして、足下のアスファルトを見つめた。


「冬って日が落ちるの早いわよねぇ‥‥帰り道、暗くて危なくない?」


普段おっとりしているおばさんは、あたしの隣でそう言って周りを見回した。


「女の子だし‥ひなこちゃん可愛いから心配だわ」

「そんな事は‥‥あ、でも電灯もあるし、この辺は割と大丈夫ですよ?」

「‥そぅ?でも気を付けないと駄目よ?」


そう言ってあたしに笑いかけると、おばさんはニコニコ笑いながら足を進める。

その周りには、航平によく似た柔らかい雰囲気が醸し出された。


「‥‥」


おばさんを横目に見ながら、あたしは小さなため息を吐く。


航平と微妙な関係で居る今、おばさんに会うのは何となく気まずい。

何か言われたらどうしよう‥‥そう思うと、いつものようには話せなかった。

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