夢みたもの
そんなあたしとは正反対に、鼻歌でも歌いだしそうなぐらい楽しそうなおばさんは、あたしの隣でニコニコしている。


「女の子って良いわよね。一緒に買い物に行ったり、お洒落も出来るし。頼りになるけど、男の子はそういう楽しみが無くってつまらないわ」

「はぁ‥」

「ひなこちゃんみたいな娘さんが居て‥恵さんが羨ましいな」

「でも私、普段母と一緒に何処かに出かけたりしないですよ?」

「それでも、家が華やかになって良いと思うわ」


母の事を羨ましがりながら、おばさんは楽しそうに話をする。


「私もあと1人産めたら‥絶対女の子が欲しかったんだけど。結局航平だけで‥あの子には寂しい思いをさせっちゃった」

「‥‥」


「ごめんね‥ひなこちゃん」

「‥え?」


少しの沈黙の後に聞こえた突然の謝罪。

驚いておばさんの方を振り向くと、さっきまでの表情を無くして、おばさんは申し訳なさそうにあたしを見つめていた。


「最近、2人が一緒に居ないのは、航平が我儘を言ったからかしら‥?」

「‥‥」

「恵さんも心配してたわ。最近、ひなこちゃんと航平の様子がおかしいって。ほら‥2人は小さい頃から兄妹みたいに一緒だったでしょ?ただのケンカにしては長引いてるし、もしかしたら原因は航平かしらって思って‥‥」

「そんな‥、そんなんじゃないです!!」


あたしは慌てて首を横に振った。


声をかけられた時から、この話をされるんじゃないかと思っていた。

だから、それ程驚きはしない。

ただ‥どう説明したら良いのか、それは全く思いつかなかった。

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