夢みたもの
こんなギクシャクした関係はもう嫌‥‥そう思って声を張り上げた。

そんなあたしを、航平はわずかに目を見開いて見つめ返す。


でも、その表情はやっぱり苦しげで‥‥

いつもみたいにニコニコ笑う航平は何処にもいない。


やがて、航平は呟くように言った。


「‥‥怖かったから‥」

「‥え?」

「部屋に入れなかったのは‥‥自分を抑える自信がなかったからだよ」

「‥‥」


意味が分からなくて、あたしは小さく首をかしげた。

そんなあたしの顔の真横を、航平の両腕がかすめ通る。


「‥‥!?」


本棚と航平に四方を囲まれた状態になって、あたしは身動きが取れなくなった。


「‥‥ちょ、ちょっと何‥?」


あたしは慌ててそう言った。


航平の顔が近い。


逃げ場の無い、息遣いさえ感じる程の距離に、あたしは今まで感じた事のない不安を感じ始めた。


何が起こっているんだろう?

どうしてこんな事になっているんだろう?

そんな疑問が頭の中でぐるぐる回る。



「‥‥ちょっと‥冗談でしょ‥!?」


あたしは頬を引きつらせながら、出来るだけ笑顔を作ってそう言った。

小さい頃から一緒に居て、こんなに不安に思った事はない。


いつも一緒に居る、仲の良い幼なじみ。

‥‥でも、

その相手は異性だと、初めてハッキリ意識したような気がした。



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