夢みたもの
「どうして‥か」


呟くような航平の声に、あたしはハッと顔を上げた。


答えは‥

聞きたいけれど、聞きたくない。


戸惑いながら航平を見上げると、あたしの視線に気付いた航平は、小さく微笑んであたしの頭を撫でた。


「‥‥うん、どうしてだろうね‥?」

「‥‥」

「俺にとって‥ひなこは特別な存在なんだ」

「‥‥」


「色々考えたよ」

ため息混じりにそう付け加えると、航平は肩をすくめる。


「ひなこを独占したい。そう思う気持ちは変わらないよ?正直に言えば、ひなこが別の誰かを選ぶなら‥、俺は、自分がおかしくなるんじゃないかな‥って思う」


「でも‥」そう続けた航平は、また寂しげに微笑んで首をかしげた。


「でもね‥、ひなこが幸せになるなら、俺にはひなこを引き止める権利なんてないんだ。ひなこには幸せになって欲しいから‥‥、そうさせるのが俺であればと思うけど」

「‥‥航平‥」

「選ぶのはひなこだよ。でも‥それまでは、俺が側に居てひなこを支えるから」



涙が出そうだった。



それは嬉しい筈なのに‥

嬉しい気持ちは間違いじゃないのに‥‥


何だか切ない。


航平は優しい。

そしてその優しさは、あたしの胸に重く響いた。



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